大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和24年(つ)36号 判決

被告人

瀨川良光

外一名

主文

本件各上告を棄却する。

理由

前略

同第三点について、

記録を調査すると、本件公判請求書に被告人の氏名として瀨川良好と記載されていることは、所論のとおりである。しかし右良好が被告人瀨川良光の誤記であることは本件公判請求書作成前に司法警察官代理が作成した本件意見書中被疑者瀨川良光なる記載、ならびに瀨川良光に対する司法警察官代理の聽取書中瀨川良光の署名の存するのに徴しまことに明瞭である。そもそも嚴格なる形式を要請されている公判請求書に被告人の氏名を誤記するが如きは軽卒で甚だ好ましくないことではあるけれども、旧刑事訴訟法第二百九十一條第二項には「被告人ノ指定ハ氏名ヲ以テシ氏名知レサルトキハ容貌体格其ノ他ノ徴表ヲ以テスヘシ」と規定し、公訴を提起する書面に被告人の氏名を表示すべきことを絶対的の要件としていないことを知ることができる。すると、公判請求書に被告人の氏名を誤記したからといつて同請求書を不適法とすべき何等のいわれがないことが了解されるのみならず本件記録に徴すると、被告人瀨川良光以外に瀨川良好なる者が存在し、その者に対し本件公訴の提起があつたことはもとより認めることができないので、右の誤記があつたからとて、被告人の同一性を確定するについて何等の支障がないことが明白であるから前掲公判請求書に基き被告人瀨川良光に対し審理判決した原審の措置に違法があるということはできない。この点の論旨もまた理由がない。

以下省略

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例